我々は無意識のうちに操られている
と聞いたら驚くでしょうか?
この本は、日常に潜む仕掛けがどのように我々の行動に影響を与えているのかを、さまざまな事例を用いながら説明しています。
私たちは常に合理的に行動しているわけではありません。
する必要のないことも、好奇心やひとときの満足感を得るために行動する場面が多々あります。
それが他者の思惑により動かされていたとしたら、、、
日常に潜む、私たちの行動を変化させるように仕掛けられた事例を紹介している本です。
あれにはそういう効果があったのか、そんな方法もあるのかと仕掛け方を吸収してください。
著者紹介
松村 真宏(まつむらなおひろ)
1975年 大阪生まれ。
大阪大学基礎工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。
2004年より大阪大学大学院経済学研究科講師
2007年より同大学准教授
2017年より同大学教授、現在に至る。
2004年イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員。
2012〜2013年 スタンフォード大学客員研究員。
趣味は娘たちと遊ぶこと(遊んでもらうこと)。
著書概要
第一刷発行 2016年10月5日
173ページ
東洋経済新報社
コンセプト
他者の行動の選択肢を増やすには?
対象読者
行動誘因の仕組みを知りたい人
文字通り、仕掛け方を知りたい人
仕掛けとはどういうもの?
この本では、写真を用いて仕掛け例を載せています。
この投稿ではそれらの写真を使用することはできないですが、みなさんが体験したことであるだろう仕掛けについて、この本から引用して紹介します。
・マンガの背表紙
背表紙を順番に並べると一つの繋がった絵になるという仕掛けを見たことはあるでしょうか。
この仕掛けは二つの意味があります。
・整理整頓させる
・足りない巻があると買い足したくなる
・上がると音が鳴る階段
運営者は慢性的な運動不足に陥っています。
階段上がることも立派な運動として捉えています。
そこでこの階段は
・運動不足を解消する
・エレベーターの混み具合を解消する
という効果を持っています。
また、この仕掛けは
子供の気を引いて、遊んでもらうという効果を発揮しています。
・男性用小便器についている的
男性用小便器は汚れやすいです。
飛び散るからです。
男性用小便器の的は
・自然と狙いたくなる
・掃除の手間を減らす
・いい匂いがする(気がする)
という効果を持っています。
最後のいい匂いがするは、運営者の気のせいかもしれませんが、狙うと熱によってなのか、水分によってなのかわかりませんが、芳香剤のような匂いがする、、、、、、
気がします。
気のせいかな、、、、
この本では、キッザニア甲子園という施設のトイレのまとが紹介されています。
火の的があり、それを狙うと鎮火されていく様子が楽しめるようです。
ぜひ、試したいものです。
まだまだ多くの例が紹介されています。
どれもユニークで、よく考えたなあと感心するものばかりです。
ぜひ、実際に読んでみてください。
こういう仕掛けもあるのかと得られることが盛り沢山です。
仕掛けの定義とは?
仕掛けといっても、色々な捉え方ができると思います。
マジシャンが言う「タネも仕掛けもありません」も含んでいるかもしれません。
なので、著者はこの本で扱う仕掛けを定義しています。
著者は、仕掛けにも良い仕掛けと悪い仕掛けがあると区別しています。
目的を知ったときに
良い仕掛け: 仕掛けられた側が笑顔になるもの
悪い仕掛け: もう二度と引っかかるかとなるもの
ということです。
ただ、著者も個人によって感じ方は異なるので一概には区別できないとしています。
また仕掛けとは、
・公平性(Fairness) 誰も不利益を被らない
・誘引性(Attractiveness) 行動が誘われる
・目的の二重性(Duality of purpose) 仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる
この三つの頭文字を取り、FAD要件を満たすものを仕掛けとしています。
仕掛けの基本
著者は、仕掛けの目的は選択肢を増やすことだと述べています。
仕掛けを利用することで、利用者のついしたくなるを引き出しているのです。
これを仕掛けの副作用性、行動の多義性と呼びます。
ここで、仕掛けの具体例とその副作用について例を示しています。
ゴミを投げる
ボールを投げる
この二つは、同じ動作です。
しかし、両者では、行動する人の感じ方が違います。
このようにゴミを捨てるという煩わしいことと、ボールを投げるという楽しい動作を組み合わせることによって仕掛けを潜ませます。
これにより、バスケットゴールの形をしたゴミ箱という仕掛けが思いつきます。
ただ、仕掛けの副作用が発生する場合があります。
バスケットゴール型のゴミ箱の例だと
入らないのにゴミを捨てすぎる
難易度を高くするため、遠くから投げ入れるようになってしまう
ことが挙げられます。
著者は、仕掛けの副作用性についてその都度修正するしかないと述べています。
仕掛けが自分の思い通りに働く可能性は、確実ではありません。
違った利用方法になってしまう可能性も含んでいます。
完璧に作用する仕掛けは存在せず、試行錯誤を繰り返すことが大切だということを学びました。
装置中心アプローチと行動中心アプローチ
仕掛けには、さまざまなアプローチ方があります。
新たに装置を設置することで仕掛ける方法
潜在的に行動を変化させる方法
があります。
どちらもメリットとデメリットが存在しますが、それが良い仕掛けかどうかは仕掛けによる便益と費用の割合であると著者は述べています。
まとめるとこうです。
メリット デメリット
装置中心:そこから得られる便益が大きい 費用もかさむ
行動中心:費用が抑えられる 行動変化のばらつきがある
ここで、防犯対策を例に挙げています。
装置中心:ドアの鍵をより強固なものにする
行動中心:花壇を作り、治安の良さを表し、犯罪を未然に抑制する
両者は、一長一短であり、その仕掛けから得る便益は仕掛けてからしかわかりません。
やはり、その都度の調整が必要であるということです。
この例から、初期費用がかさむ仕掛けは、あまり望ましくないということがわかります。
初期費用に加えて、仕掛けを調整する費用も別途かかってしまうからです。
いかに少ない費用で、行動の選択肢を増やすかが重要だと学びました。
仕掛けの発想法
これまでの章で、仕掛けというのはどういうものなのかということを学びました。
では、仕掛けをどう発想すれば良いのでしょうか?
著者は仕掛けを思いつく方法として
子供を観察する
行動観察
ことだと述べています。
子供の好奇心は大人には計り知れないものであり、そこに仕掛けのヒントが隠されています。
子供はどこでも楽しくなる方法を思いつきます。
それは、大人になっていくと自然とできなくなっていくことです。
子供にしか理解できない世界から学ぶべきことがあることを知りました。
人間観察も効果的な手段です。
毎日を過ごしていると、人間の行動は規則化されていき、新しい発見がなくなっていきます。
他者の行動を観察することで、自分の生活では発見できないことが隠されているかもしれません。
終わりに
仕掛学という学問はまだ広く浸透していませんし、運営者自身もこの本で初めて知りました。
人の行動には昔から興味があり、自分では考えられないようなことを、他者は日常的に行います。
ある程度人間の行動はパターン化され、過ごしていくうちに新しい刺激を受けることはそうなくなります。
この本から、仕掛けを通して人の行動に変化を与えるヒントを得ることができました。
無意識だと思っていても、人の行動には何かしら理由があります。
それをこの本から教えてもらいました。
ぜひ、手に取っていただきたい一冊です。