芸人 西野亮廣
お笑い芸人としての活躍が著者の第一印象だと思いますが、実は実業家としての顔も持っています。
そんな著者の波乱万丈な人生について語った本です。
著者は、決して成功ばかりではなく何度も大きな壁と対峙し、乗り越えてきました。
泥臭く、狡猾な著者のビジネス観を覗いてみましょう。
目次
著者紹介
西野亮廣
1980年 兵庫県生まれ。
芸人。
著書に、絵本「Dr. インクの星空キネマ」、「ジップ&キャンディロボットたちのクリスマス」、「えんとつ町のプペル」
ビジネス書 「魔法のコンパス」があり、全作ベストセラーとなっている。
著書概要
第一刷発行 2017年10月4日
310ページ
発行社 株式会社 幻冬社
コンセプト
効果的な広告には、理論がある
対象読者
・お金の本質を知りたい人
・信用の大切さを知りたい人
・芸人 西野亮廣の活躍を知りたい人
お金、クラウドファンディングとは?
近年、新規事業を始めるときに思いつく手法はクラウドファンディングです。
しかし、その本質的な仕組みを知っている人はそう多くありません。
お金がタダでもらえる?
じゃあ、自分でもできるんじゃない?
と思っている人も少なからずいると思います。
しかし、そんな都合のいい仕組みがあるはずがないですよね。
著者は、
自身の経験を交えながらクラウドファンディングの仕組み
加えてお金とは何か?
について説明しています。
簡潔にいうと
お金とは 信用の数値化
クラウドファンディングとは 信用のお金化
であると結論づけています。
これらについて詳しく解説していきます。
日本で、紙幣は中央銀行(日本銀行)が唯一の発行権を持っています。
中央銀行がこの紙幣は1000円分の価値がある。この紙幣は10000円分の価値があると定めているからです。
その紙幣の価値を裏付けるものは何もありません。 ただ、中央銀行が発行しているだけです。
ではなぜ成立するのか?
それは、中央銀行が大きな信用を持っているからです。
中央銀行が発行しているなら、間違いないよねという共通認識が全国民にあるので、買い物をする際にそれを利用できるわけです。
よって、お金とは、信用を数値化したものであると著者は述べています。
そして、クラウドファンディングとは、信用のお金化であると述べています。
つまり、信用をたくさん稼いでいる人が、新規事業をする際に
自分の信用を利用してお金を集める手段
であるということです。
この理論でいくと、単なる学生である運営者が新規事業をやりたいです。と手を挙げてもお金が集まる可能性は限りなく0に近いということです。
何かをしたいときにはまず最初に
信用を集めること
が大切であるということを著者は強く主張しています。
この書評でも述べましたが、何の成果物もない人に企業は仕事を任そうとはしません。
(ぜひ、合わせて読んでみてください)
発信し続け、自分という人間の価値をわかってもらうことが第一歩となることをこの本から学びました。
生活圏を分散させる
皆さんは、現在所属しているコミュニティがいくつありますか?
家族
学校
職場
クラブ活動、サークル活動
など複数のコミュニティにまたがって生活している人が多いと思います。
そのコミュニティを著者は生活圏とよび、これを分散させることの意味について自身の芸能界での生活を元に述べています。
芸能界は、我々一般人からすると煌びやかで、華やかなイメージが先行しますが、実はなかなか生きづらいもののようです。
番組の意図に合わせるために、自分の言いたいことが言えない。想像通りにいかない。など沢山の苦労の上で番組が作られています。
運営者は芸人さんのラジオを聞くことが趣味の一つでもあるのですが、ラジオ番組の方が芸人さんがイキイキしていてテレビで見る姿とは違うなと思うことがあります。
これも、芸人さんが自分の意見を発信できる生活圏としてラジオ番組を利用しているのではないか?と思いました。
そしてこれは、我々一般人のコミュニティに対しても言えることではないでしょうか?
小学生の頃は、自分のコミュニティのほとんどが学校生活のため、ここで仲間意識が強く作られ、この生活圏から追い出されたくないと必死に頑張っていたのではないでしょうか?
我々は、芸能人の皆様と同様に多くの場面で嘘をついています。
それは、嘘をつかなければならない環境だからです。
著者が述べた「生活圏を分散させる」というのは自分の真の意見を発信するため、生きやすくするためであると感じました。
インターネットが破壊したもの
インターネットの発展は、我々の生活に大きな変革をもたらしています。
その一つに著者は、
物理的制約を必要としなくなった。
と述べ、本屋の例を紹介しています。
町の本屋を利用することは少なくなってきました。
インターネットが本屋に与えた影響は モノではなくデータ を扱うだけで良くなったということです。
これにより、売るものを選別して店頭に並べなければいけない店舗型の売り方よりも、多くの商品を取り扱うことができるようになりました。
急激な町の本屋さんの減少にはこういった理由がありました。
無料公開
現在映画化されている著者の作品の「えんとつ町のプペル」は、その絵本の内容を無料公開したそうです。
なぜ? 利益出ないんじゃ?
運営者もそう思いました。しかし、綿密に練られた戦略がそこにありました。
価値があるものを無料公開することで、
世間にその作品を広く普及させて、その副次的な効果で収入を得る
ということです。
これは別の言い方をすると
収入の発生を後ろにズラしている
ということです。
「えんとつ町のプペル」の絵本は、今上映されている映画や、その個展などの初歩的な段階でしかなかったのです。
ここで無料公開の持つ収益力について学びました。
運営者がよくプレイしているAPEXというオンラインのFPSゲームは、wifi環境さえ整えれば基本プレイ無料で利用できます。
しかし、キャラクターや武器のスキンを購入させることで利益を出しています(自分はスキンに興味がないので無料で遊ばせていただいています)。
ゲーム業界でも無料公開というものが浸透しつつあるな、と実感しています。
著作権は必要か?
「えんとつ町のプペル」の著作権はナアナアにしているそうです。
これも、お金を稼ぐことが目的ではなく、この作品をより広く普及させるためだと著者は述べています。
ここにも、収益の時期を後ろにずらしているだけという無料公開の精神が反映されています。
さまざまな用途で作品が利用されれば、それが広告となり、そのキャラクターを作った個人への興味から本の出版や講演会のオファーが届くからです。
よって著作権は必要かどうかという問いに対して、著者は場合によると結論づけています。
確かに、著者のように収入源が多岐にわたる場合、この作品からの即時の収入は問題ではなく、収益化を後ろにずらすという選択を取ることができます。
しかし、その特許料のみを生活の収入源としている者にとって、この選択は取ることができず、特許を取るという選択を取らざるを得ないだろうからです。
色々なビジネス本でも語られていますが、収入源の多様化が、人生の選択肢を増やすという意味も込めて、必要不可欠な要因であると痛感しました。
おみやげ化して購入しやすくする
著者は、作品が購入されにくい原因として作品が生活必需品でないことに言及しており、生活必需品として扱ってもらう方法として、お土産を挙げています。
お土産は主に観光地などで売られているもので、生活必需品でないように思えますが、観光地のお土産屋は潰れておらず、消費者が手に取りやすい傾向にあります。
これは、お土産がその経験を思い出させる機能を有しているからだと著者は述べています。
よって、著者は自分が開催する個展に合わせ、本を出版し、体験とモノをつなぎ合わせました。
えんとつ町のプペルの広告として他に行ったことがハロウィンのゴミ回収です。
このイベントは、年々、市場が大きくなりつつあるハロウィンイベントで発生するゴミをゴミ回収イベントと称して、主人公のルビッチの扮装をして、渋谷のスクランブル交差点を掃除するというものでした。
これは、ルビッチのモデルがゴミ人間だったこともあり、ハロウィン=ゴミ=ルビッチ
というイメージの刷り込みを目標としたプロジェクトでした。
お金を出させるきっかけとは?
著者は、本屋の例を出しこの問いを展開しています。
読書を日常的にしている人はあまり多くありません。
それは、活字を読むことが苦痛だという意見もありますが、本を買うことにお金を出すきっかけがないからだと述べています。
それを解決する方法は、コミュニケーションです。
読書を趣味としている人からおすすめの本などを教えてもらうと興味はないけれど買ってみようかという気持ちになるあれです。
もう一つの方法は、物を買うことによる後悔の可能性を取り除いてあげることです。
物を購入する際に消費者が考えていることは、それを購入して自分が得するかどうかです。
自分が何の便益も得られない、または損をするのであれば、購入することはなくなります。
この点において、無料公開というのは
という意見を持っています。
終わりに
巷では、西野亮廣さんは詐欺師だなど間違った評価に溢れているように感じます。
実際に、著者が行っている事業をよく知らないまま発言しているからです。
運営者は、彼の支援者でも何でもありませんが、著者のビジネス観から学ぶべきことは多いと感じました。
著者は、常に自分がやりたいことに飛びつき、それに対してさまざまなアプローチを仕掛けています。
その姿勢を見習うべきだと運営者は感じました。
ぜひ、手にとって欲しい一冊です。